花粉症の時期、実はトイレも近くなる?頻尿の意外な落とし穴と対策
春先、鼻水やくしゃみに悩まされる花粉症の季節ですが、実はこの時期に尿の悩み(頻尿や残尿感)で来院される患者さんが増えることをご存知でしょうか。
「花粉症と尿の悩み、一見関係なさそうだけど……」と思われるかもしれません。
しかし、医学的には非常に深い関わりがあります。今回は、その意外な落とし穴と対策について、エビデンスに基づき解説します。
なぜ花粉症の時期に頻尿が増えるのか?
主な原因は、アレルギー反応そのものと、皮肉にもその治療薬にあります。
抗ヒスタミン薬の抗コリン作用による排出障害
花粉症治療の主軸である抗ヒスタミン薬の中には、抗コリン作用(副交感神経を抑制する働き)を持つものがあります。
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メカニズム: 膀胱が尿を出すためには、副交感神経の指令で膀胱の筋肉が収縮する必要があります。抗コリン作用はこの働きをブロックしてしまうため、膀胱が十分に縮まず、尿を出し切れない排出障害が起こります。
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頻尿への転化: 尿がしっかり出し切れない(残尿)と、すぐにまた膀胱がいっぱいになり、結果として何度もトイレに行きたくなるという頻尿症状が現れます。
膀胱粘膜のアレルギー反応
近年の研究では、膀胱の粘膜にある肥満細胞(マスト細胞)がアレルギー反応に関与していることが指摘されています。
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メカニズム: 花粉などのアレルゲンに反応してマスト細胞からヒスタミンが放出されると、膀胱粘膜に微細な炎症が起き、膀胱が過敏になります。これが間質性膀胱炎の悪化因子や、頻尿の原因となることがあります。
参考文献
NIH (National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases): Interstitial Cystitis/Bladder Pain Syndrome
日本泌尿器科学会:間質性膀胱炎・膀胱痛症候群診療ガイドライン
特に注意が必要な尿閉のリスク
特に前立腺肥大症の傾向がある男性や、高齢の方は注意が必要です。 抗コリン作用の強い薬を服用すると、完全に尿が出なくなる急性尿閉を起こすリスクがあります。これは激痛を伴う救急疾患です。
市販の鼻炎薬や風邪薬には、この抗コリン成分(ベラドンナ総アルカロイドなど)が含まれていることが多いため、安易な併用は避けなければなりません。
泌尿器科が教える3つの対策
花粉症も頻尿も我慢する必要はありません。以下の対策を検討しましょう。
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第2世代の抗ヒスタミン薬を選ぶ
近年の第2世代抗ヒスタミン薬は、従来の薬に比べて抗コリン作用が大幅に抑えられています。泌尿器への影響が少ない薬剤を選択することが可能です。 -
点鼻薬や点眼薬を主軸にする
飲み薬(全身投与)ではなく、局所に作用する点鼻薬や点眼薬を併用することで、全身への副作用を最小限に留めることができます。 -
泌尿器科に受診
おしっこが出にくい、回数が多いと感じたら、すぐに泌尿器科に相談してください。お薬手帳を持参し、現在飲んでいる花粉症薬を伝えることが最も確実な解決策です。
最後に
花粉症の季節を快適に過ごすためには、鼻や目だけでなく全身の体調に目を向けることが大切です。当院では、患者さんのライフスタイルや既往歴に合わせ、QOL(生活の質)を損なわない治療を提案しています。
少しでも違和感があれば、一人で悩まずにお気軽にご相談ください。
執筆者情報
日本とドイツの医師免許を持つ脳神経外科医
市村 真也(いちむら しんや)
- 医療法人慶真会 川崎中央クリニック院長/横浜フロント脳神経外科・泌尿器科理事長
- 開成高校卒・慶應義塾大学医学部卒
- 脳神経外科専門医・医学博士
- 月9ドラマ「ヤンドク!」脳外科医療指導
- テレビ出演多数
【保有資格・所属学会】
- 日本脳神経外科学会専門医
- 日本脳卒中学会専門医
- 脊椎脊髄外科専門医
- 日本脊髄外科学会認定医
- 日本がん治療認定医
- 日本神経内視鏡学会技術認定医
- 日本医師会認定産業医
- 日本医師会認定健康スポーツ医
- ドイツ医師資格
- ドイツ脳神経外科学会正会員
- ヨーロッパ脳神経外科学会正会員

