赤ちゃんの頭の形の頭蓋骨矯正ヘルメット治療外来
頭蓋骨矯正ヘルメット「クルムフィット」
当院では1歳以上のお子様のヘルメット治療は行っておりません。
ヘルメット治療に関する最新の情報やブログは頭蓋骨矯正ヘルメット治療専用サイトにて更新しております。
最新の頭蓋骨矯正ヘルメット「クルムフィット」
頭蓋骨矯正ヘルメット「クルム」
赤ちゃんのあたまの骨の構造は、生まれてからは脳の容積増加に伴って縫合部を中心に拡大成長します。一般的に縫合は18ヶ月頃になりますと完全癒合しますが、発達早期に病的な骨性癒合を起こした頭蓋骨早期癒合症などでは、癒合した縫合部の骨成長が障害され、頭蓋の形態や容積に異常が現れます。
日本ではこうした病態患児に対しての外科的治療の、再発予防目的であったり、また病的でない、寝癖によっての位置的頭蓋変形症に対して、適切な矯正装具もなく、ご両親が通称ドーナツ枕と称される市販品を用いたり、タオルなどを使用して頭の向きを変えたりと、何とか後頭部の歪みを矯正しようと涙ぐましい努力をしていた歴史があります。欧米ではこうした病態患児に対して数年前よりヘルメット治療を実施され、その有効性については今日まで多くの報告がされております。
欧米では新生児、乳児のうつ伏せ寝が推奨されることにより、乳児の突然死が急増した歴史があります。それにより、1992年より乳児は仰向け寝が推奨されるようになりましたが、このことが後頭部頭蓋変形の乳幼児の発症を急増させる結果となったのです。現在、新しい技術により、その変形を適切に矯正することが可能となりました。
これまでの頭蓋骨矯正ヘルメット治療は米国製が主流でしたが、日本の温暖湿潤気候にも適応したアジア人の皮膚にも優しく、また欧米人よりも首が細いので軽量化した日本人の赤ちゃんのあまたの形に適したヘルメットを装着するのが好ましいです。通常、赤ちゃんの頭の形の頭蓋矯正のためにヘルメットを装着するのは平均約6ヶ月前後です。
当院ではジャパン・メディカル・カンパニー社と提携し、「クルムフィット」による赤ちゃんの頭の形の頭蓋骨矯正ヘルメット治療を行っております。
日本では今までに「アイメット」と「クルム」、「クルムフィット」を合わせて10,000症例以上の治療実績があります。
アイメットとクルム どちらもグッドデザイン賞を受賞しています
ヘルメットにより頭蓋骨に陽圧圧迫を加えず、ヘルメットシェル及び低反発クッションにより、長軸方向の成長を待機させ、扁平化した部分の頭蓋骨成長を促進させます。これにより、頭囲拡大を抑制することなく、頭蓋骨変形を矯正することができます。
この治療の治療の適正な時期は生後2-6か月と考えています。2か月で来院していただいて、首が座り始める3か月前からヘルメット治療を始めるのがベストです。また計測してからヘルメット完成までに2週間がかかるために、治療をすぐに始められるわけではありません。生後6か月以降では治療効果が徐々に低くなると考えております。このような理由から当院では1歳以上の子供のヘルメット治療は行っておりません。ヘルメット治療の効果が高い時期は初めの3か月で、この時期に長時間のヘルメット装着によりできる限り矯正するのが重要です。当院では6か月間という期限を設けて集中してヘルメットを装着します。
赤ちゃんの頭の形の頭蓋骨矯正ヘルメット治療の実際
Case Mさん
短頭(絶壁)と右扁平斜頭のために2か月半よりヘルメット治療開始
(このテータの公表にはご両親の同意と許可を得ております)
緑が治療前、灰色が治療開始6か月後の卒業時
6か月間の治療を経て前後比率(短頭率)は101%→107.8%、後頭部左右対称率(扁平率)は89.3%→94.6%に改善いたしました。また耳の位置のずれも改善され、左右対称になりました。重ね合わせた上の図では、その劇的な治療効果がよくお判りになられると思います。今までに私が治療してきた中で一番頭の形がきれいになった赤ちゃんの一人です。ご両親は装着後1週間で既にヘルメットの矯正力を実感したそうです。
この治療は、保険適用外のヘルメットを使用します。治療期間6か月間で2回の定期的な計測と6回のスポンジ張替えを行います。
赤ちゃんの頭の形の頭蓋骨矯正ヘルメット治療をご希望の方は、初診予約をして一度受診しご相談ください。初診は完全予約制です。
初回診察では保険適応内での検査を行い、レントゲン等で頭蓋骨と脳に異常がないかを確認します。最新のX線フラットパネルディテクターを導入しレントゲン写真の放射線量を半減させていますので安心して検査を受けてください。
神奈川県内の赤ちゃんは小児医療費助成のために初診の自己負担はありません。他の市町村の赤ちゃんの初診では各市町村の小児医療費助成に基づいて、いったん窓口で自己負担額を支払う必要がありますが、後日、区役所保険年金課保険係給付担当に申請することにより払い戻されます。
当院での頭蓋骨矯正ヘルメットの治療成績
当院では現在までに300人以上の赤ちゃんのあたまの形の頭蓋骨矯正ヘルメット治療を行ってきました。今までの治療成績をまとめて学会発表するのを機に当院での治療成績をまとめます。
なお、このデータはあくまで当院での治療成績であり、一般的なヘルメット治療の治療を反映したものではありません。また、専門家ではない一般の方々にも分かりやすいように学会発表とはあえて異なる形のデータとなっておりますのでご了承ください。
日本で初となる赤ちゃんの頭の形の日本製頭蓋骨矯正ヘルメットによる治療成績の学術論文が出版されました
後頭部左右対称率の重症度分類
後頭部左右対称率の重症度は
レベル1(90%以上:軽度)
レベル2(85-90%:中程度)
レベル3(80-85%:重度)
レベル4(80%以下:超重度)
の4段間に分類されます。
頭蓋骨矯正ヘルメット治療ではレベル1の90%以上を目標とします。
レベル1では頭の歪みはほとんど目立たなくなります。
6か月間の治療での後頭部左右対称率レベル1達成率
現在までに6か月間ヘルメット治療した全ての赤ちゃんにおけるレベル1の達成率は約67%です。
レベル別のレベル1達成率は以下の通りです。
レベル2:約95%
レベル3:約75%
レベル4:約40%
治療前の後頭部左右対称率の重症度が低ければレベル1達成率が高くなるという、ごくごく当たまえの結果となりました。
治療前後頭部左右対称率レベルごとの改善率
6か月間の治療前後頭部左右対称率レベルごとの改善率の平均は
レベル2:約6%
レベル3:約10%
レベル4:約14%
となりました。
重症度が高いほど改善値が大きいので、治療前重症度が高くても悲観する必要はないと考えます。
治療開始月齢による後頭部左右対称率レベル1達成率
頭蓋骨矯正ヘルメット治療には治療開始月齢が非常に重要です。我々は治療適正時期を月齢2-6か月と考えており、この月齢6か月を境として6か月間のヘルメット治療による後頭部左右対称率レベル1達成率は以下の通りです。
治療開始月齢6ヶ月以下: 約70%
治療開始月齢7ヶ月以上: 約45%
我々が考えた通り、月齢6か月を境に治療効果が落ちることがわかりました。このデータからも頭蓋骨矯正ヘルメット治療の適正時期は月齢2-6か月と考えて良さそうです。
ヘルメット装着時間
頭蓋骨矯正ヘルメット治療においてヘルメットの装着時間も治療効果に大きく影響します。
当院での全期間平均装着時間は1日あたり約20時間となっております。
これはヘルメット治療を受けている赤ちゃんのご両親が頑張ってくれてかなりの長い時間装着してくれていることを示しています。
また治療開始後の3か月を境にヘルメット装着時間を比較すると
1~3ヶ月平均: 約22時間/日
4~6 ヶ月平均: 約18時間/日
となりました。
治療開始後の最初の3か月が治療効果が高いと考えており、特にこの3か月間に長時間ヘルメットを装着するようにご両親には指導しております。また、治療開始後4-6か月になると赤ちゃんも成長するためにヘルメット装着を嫌がったり、自分で外すことが多く装着時間が短くなることが多いです。
今回のデータは以上のことを反映したものとなっていると考えています。
ご両親の満足度
6か月のヘルメット治療終了後のご両親の治療に対する満足度は約90%でした。(5段階の1:大変満足、2:満足を合わせて)
良好な治療成績が高い満足度に結びついたと考えています。
考察
今回のデータは私が想像していたよりもはるかにいい成績となりました。この原因として2つの要因が考えられます。
まず1つ目は、我々と赤ちゃんのご両親と確固たる信頼関係を築くことによってヘルメットを長時間装着してくれるということです。
全期間の平均装着時間が1日あたり20時間近くというのはかなり長時間です。ヘルメットを作成しただけでは治療に結びつきません。ご両親方には装着時間の重要さをご理解を頂き、このような結果に結びついていると考えます。
そして2つ目の要因として豊富なマンパワーによる治療システムが挙げられます。
当院ではジャパン・メディカル・カンパニー社から派遣されたスタッフと共に治療に当たっています。これだけのたくさんの人数がヘルメット治療に携わるシステムを構築したからこそ適切なスポンジ交換や計測、皮膚のトラブルへの対応を効率よく行うことができます。
また大人数の目で赤ちゃんを見ているからこそ、何かトラブルが起きそうなときは未然に気づいて防ぐことができます。