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整形外科と漢方

漢方薬

漢方薬とは漢方医学で用いる医薬品のことで、複数の生薬(薬効のある植物、動物、鉱物などの不要な部分を取り除いたり、乾燥させて加工したもの)を組み合わせて作られた薬です。
医療機関で処方される漢方製剤は健康保険が適用されますので、自己負担を抑えて使用することができます。

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漢方薬が有効な整形外科疾患・症状

整形外科診療では主にロキソニンやカロナールなどの痛み止めが出されることが多いですが、漢方薬も腰痛/肩こり/五十肩/関節炎/筋肉痛/関節リウマチ/坐骨神経痛/しびれ/下肢痛/打撲など多種の疾患・症状に有効です。
変形性膝関節症では防已黄耆湯、腰部脊柱管狭窄症状では牛車腎気丸など、論文によるエビデンスが出ている漢方薬も多くあります。

漢方医学の基本知識

漢方医学では、体のバランスが乱れることで病気が発生すると考えられており、それぞれの患者が持つ体質や症状に合わせて漢方薬を選択し、経過を見るのが重要とされます。この患者さんの症状や体質に応じて個々に異なる漢方薬を処方する治療方法を「随証治療(ずいしょうちりょう)」と言います。

漢方医学における患者さんの評価方法

漢方医学には証・気血水という不調の原因を探るものさしがあり、この評価法を用いて患者さんがどのような状態にあるかをカテゴリ分けします。証・気血水の異常には以下のように色んな種類があります。

実証(元気がある) /虚証(元気がない)

寒証(冷えやすい)/熱証(のぼせやすい)

気(気鬱(だるい、情緒不安定)/気逆(消化不良や胸焼け・吐き気)
 気虚(体力や免疫力が低下している状態))

血 瘀血(循環障害)/血虚(貧血)

水 水毒(むくみ)/乾燥

随証治療の実際

患者さんの訴える症状や体調、体の冷えやほてり、舌診(舌の診察)や脈診(脈の診察)などの漢方医学独特の診断方法をもとに患者さんの「証・気血水」を確認し、その患者さんにあった漢方薬を選択します。
一人ひとりの症状や体質に合わせて漢方薬をカスタマイズすることで、より治療効果が高まることが期待されます。

例えば、同じ腰痛でも、体の状態や症状が異なる患者には異なる漢方薬を処方します。

腰痛+臀部痛・夜間頻尿→八味地黄丸 
(地黄等が腎虚(腎機能の低下)を補います。また附子は体を温め、慢性的な痛みや痺れの改善を助けます)

下肢の冷え、浮腫→牛車腎気丸 
(八味地黄丸に牛膝と車前子を加えた薬で、徐痛と利尿効果が強化されています)

冷えると腰痛→当帰四逆加呉生姜湯
(虚証、寒証の方に使用します。)

生理痛に伴う腰痛→桂枝茯苓丸 桃核承気湯
(生理の時期は実証・熱証・瘀血にあたり、血を巡らせる桃仁や牡丹皮が含まれている桂枝茯苓丸を主に使用します)

妊娠期の腰痛→当帰芍薬散
(利水作用のある沢瀉が含まれ、血虚に水滞を伴う妊娠期に効果的です)

更年期女性の腰痛→当帰芍薬散 桂枝茯苓丸 加味逍遙散  
(女性の三大処方と言われる3剤です 加味逍遙散には気を巡らせる薄荷や血を巡らせる牡丹皮が含まれ、気滞・血虚の方に用います)

このように腰痛1つとっても、患者さんの特徴に合わせて処方を変更しています。

随証治療は、一般的な西洋医学とは異なるアプローチを取る治療方法であり、医師の経験や診断力が重要です。西洋医学の診断・治療と併用し、総合的な治療の一助として活用していきます。

漢方薬の飲み方

漢方薬は空腹時の方が吸収されやすいので、食事の30分前、また食間(食後2時間経過時)の空腹時に内服します。しかし都合により食後に飲めない、あるいは内服を忘れるくらいなら食後の内服でもかまいません。
漢方独特の香りが気になるようであれば、オブラートに包んでの内服やゼリーに混ぜての内服、少量のお湯に溶かして内服しても問題ありません。ジュース、牛乳などとは一緒に内服しないよう注意してください。

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