心臓が活動するために十分な血液が届かなくなると突然死のリスクも高まります

心臓を動かす筋肉（心筋）へ新鮮な血液を送る役目を担うのが冠動脈です。何らかの原因によってこの冠動脈から十分な血液を供給することができなくなる異常を総称して「虚血性心疾患」と呼びます。虚血性心疾患の代表例としては狭心症や心筋梗塞などといった病気が挙げられます。

虚血性心疾患が起きるメカニズムとは

 

心臓は全身へ血液を送るために24時間休むことなく働き続けています。その活発な動きを日夜支えるエネルギー源となるのは、新鮮な酸素と栄養分がたっぷりと含まれた大量の血液です。この大事な心臓をぐるっとひと回りするように取り囲んでいるのが冠動脈と呼ばれる血管です。冠動脈からは常に心臓に向けて豊富な血液が安定供給されています。それにより心臓は収縮や拡張といった運動をコンスタントに続けることができるのです。

ところが、この大事な冠動脈が動脈硬化などの原因によって詰まりを起こしたり、内部が狭まったりして通過する血流量が低下すると心臓は途端に酸欠状態や栄養不足に陥ります。急激に運動量が低下し、さらに完全に血流が途絶えてしまうと心筋は壊死し始めます。「虚血」とはまさにこのように血液が足りなくなる状態を言います。虚血の程度や状況によって狭心症や心筋梗塞と呼ばれる病気に細かく分類されてゆきます。

虚血性心疾患の代表的な病気

虚血性心疾患は主に冠動脈の動脈硬化によって引き起こされます。冠動脈内が狭まり、詰まりや血流がとどこおった程度によっても現れる症状はさまざまに異なります。たとえ今は軽症でも、いずれ突然死など命に関わる重大な事態に陥る危険性が高まっていると言えます。早期に異常に気づき、適切な治療をすぐさま開始できることが何よりも望まれます。

狭心症

動脈硬化による血中の沈殿物によって冠動脈内が一時的に詰まりを起こし、心臓が酸欠状態や栄養不足に陥ります。一時的ながらも心臓の活動が中断されるために、強い胸の痛みや息苦しさを感じます。初期はコレステロールなどの小さな塊が詰まりを起こす程度ですが、動脈硬化が進行するにつれてこぶ状に大きく成長し、いずれ血管内は完全にふさがれ血流が遮断されます。狭心症は突然死に至るケースも多くみられるため、まずはご自身が大変危険な状態であることを正しく理解する必要があります。

心筋梗塞

冠動脈内の血流が完全に遮断され、酸欠状態が長く続くと心臓組織が壊死を始めます。突然耐え難いほどの激しい胸の痛みに襲われ、動悸やめまい、失神などのショック状態に陥ることもあります。一度壊死した組織は、たとえ血流が再開したとしても残念ながら元の状態に戻ることはありません。壊死した範囲が大きいほど心臓の能力は低下し、最悪の場合には死に至ります。心筋梗塞を起こした方の約半数は、発症する数カ月以内にも胸痛などの前兆を経験すると言われています。狭心症から心筋梗塞に進行するケースも非常に多くみられますので、異常を感じたら直ちに詳細な検査確認を行うことが重要です。

引き金となるさまざまな原因

動脈硬化を引き起こす原因となるのは言わずもがな高血圧・糖尿病・高コレステロール血症などの生活習慣病をはじめ、過度な喫煙や遺伝的要素などさまざまなものが挙げられます。その他にも、冠動脈の攣縮（けいれん）や血管の炎症、動脈解離、心原生塞栓症（心臓でできた血栓が突然全身にばらまかれるようにして詰まりを起こすもの）、急な激しい運動や強いストレスなどによっても虚血性心疾患は引き起こされる可能性があるため注意が必要です。

すでに何らかの症状がみられる場合には具体的な治療が必要となります

冠動脈内の動脈硬化がすでに進行している場合には心臓バイパス手術などの外科手術が必要となります。一方で内科的なアプローチによって行う治療法もあります。冠動脈インターベンション（経皮的冠動脈形成術/PCI）といって、冠動脈内の狭くなっている場所にカテーテルを通して風船を広げる要領で血管内を広げ、冠動脈がまた一定の血流を保てるように改善する方法があります。いずれにせよまずは早期に異常を見つけ出し、現状を正しく評価する必要があります。

命に関わる重大な危険を回避するために
当院ではご一緒に最良の治療法を模索いたします

 

まずは動脈硬化を招く元凶とも言うべき高血圧や糖尿病、高コレステロール血症などの生活習慣病の進行を防ぐことが第一となります。さらに日常的に過度な喫煙をされている方においては禁煙に努めることもとても重要なこととなります。生活習慣病も動脈硬化も、どちらも長年にわたる不摂生の積み重ねによって引き起こされる病気です。塩分の多い食事や脂肪分の多い食品の摂取を控えたり、規則正しい健康的な毎日を意識するなどといった生活の見直しを図ることも意味のある大きな一歩となります。
当院ではその方にあった最良の治療法を模索させていただいております。一人で悩みを抱え込まず、まずは一度ご相談いただければと思います。当院では必要に応じて近隣の高度医療機関とも随時連携いたしております。何らかの異常や疑いのある症状がみられる場合にも、迅速に具体的な治療に結びつけられるよう尽力いたしております。ぜひ安心してご相談ください。