水頭症センター
診断、手術からリハビリまで
当院では局所麻酔による正常圧水頭症の手術の導入を契機として、水頭症センターとして外来、手術チーム、リハビリテーション科と連携した一貫した診断と治療を行っています。
急性期の病院ではリハビリ専門施設に転院してリハビリを行うことが多いので、当院のように手術から術後のリハビリまで切れ目のない治療ができる医療施設は実は多くはありません。
手術チームと手術が無事に終わった後に
診断:見過ごされることの多い正常圧水頭症
65歳以上の日本人の1.1%、即ち30万人以上の患者さんがいると推定されています。また認知症患者の5〜10%が罹患していると考えられます。このように正常圧水頭症は珍しい病気ではありません。
また、画像では脳の萎縮による脳室拡大と区別がつきにくいために、正常圧水頭症は見過ごされることの多い病気です。
今までにも他院で脳の萎縮と診断されて経過観察されていた患者さんが、当院を受診し実は正常圧水頭症であると診断されて手術をして症状が改善したケースが数多くあります。
当院では正常圧水頭症を見過ごさないために普段の画像の撮影に工夫をしております。
正常圧水頭症の3つの特徴的な症状は
- 歩行障害(歩行の不安定さ、すり足、足が前に出にくい)
- 認知機能障害(物忘れ、注意力の低下、認知症に似た症状)
- 尿失禁(頻尿や失禁)
です。これらの症状がゆっくり進行するため、加齢による変化や認知症と誤診されることもあります。
また、正常圧水頭症は適切な手術治療を行えば速やかに症状も改善され、「治る認知症」としても昨今注目を集めています。
正常圧水頭症の疑いのある患者さんは入院したうえで、腰椎から髄液を採取し(腰椎穿刺)、歩行障害や認知症といった正常圧水頭症に特徴的な症状か改善するかを確認する検査(タップテスト)を行います。
手術:局所麻酔による正常圧水頭症の手術
当院では局所麻酔による正常圧水頭症の手術を導入しております。
この手術は数ある正常圧水頭症の手術の中でも患者さんの体への負担が少ないために最先端かつ最良の手術だと考えています。
シャント手術にはMiethke shunt system(ミートケシャントシステム)を採用しています。
バルブが薄くて目立たない、頭蓋骨にあけたバーホールがバルブで覆われるので術後に陥没することが少ない、簡易にシャント圧を簡単に代えることができる、圧を気にすることなくMRIを撮影できる、患者の体位変換に応じて開放圧が自動調整されるグラビティーコントロール機能がある、といった利点を挙げればきりがなく、特に欠点も欠点も見当たらないので現時点ではパーフェクトなシステムだと個人的には考えています。
Miethke shut systemの創始者であるMiethke氏がドイツからはるばる当院を訪問しましたが、当院で行っている局所麻酔による正常圧水頭症の手術に関して私と議論をしたかったからです。
術後:リハビリテーション
手術と同じかそれ以上に重要なのは術後のリハビリです。
当院では経験豊かなリハビリチームが術後翌日からリハビリを開始します。
手術からリハビリまでの継ぎ目のない一貫した治療が正常圧水頭症の治療では重要です。
水頭症センターを設立した意味はここにあります。
術後の歩行訓練