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ヤンドク!の手術を脳外科医療指導医が解説 ⑬蝶形骨縁髄膜腫に対する開頭腫瘍摘出術(第11話)

[2026.03.29]

3ヶ月に及んで放送されたヤンドク!も今回で最終回を迎えました。

通常の診療の傍らで週に2日もお台場のフジテレビ湾岸スタジオに通うのは本当に大変でしたが、人生初のドラマの医療指導・監修はやりがいのある仕事でした。

手術を一番指導させていただいたのは主役の湖音波先生(橋本環奈さん)で、収録期間中は毎週のようにスタジオでお会いしました。

このドラマを通じて、普段は見せることのできない手術場のリアルな現場を視聴者の皆様に提供することができたと思います。

 

髄膜腫とは?

髄膜腫とは、脳そのものではなく、脳を包んでいる髄膜(ずいまく)という膜から発生する腫瘍です。

脳腫瘍と聞くと脳が病気になるイメージがあるかもしれませんが、髄膜腫は脳の外側の袋にできる腫瘤が脳を外から押し込んでいる状態を指します。

中田先生の髄膜種の画像(第10話より)

 

 原発性脳腫瘍の中で最も頻度が高く、全体の約30〜40%を占めます(日本脳腫瘍統計より)。

 40代〜70代の成人、特に女性に多いのが特徴です。

髄膜腫ほ約90%が良性腫瘍(WHOグレード1)です。

良性腫瘍であることが多いので、1年に数ミリ程度、あるいはほとんど大きくならないこともあります。

手術で全部取りきることができれば、再発の可能性は低く、完治が目指せます。

腫瘍自体は良性ですが、脳は頭蓋骨という硬い箱の中に入っているため、腫瘍が大きくなると脳や神経を圧迫して症状が出ることがあります。

髄膜種の治療は日本脳神経外科学会のガイドライン等に基づき、一般的に以下の3つの選択肢があります。

1. 経過観察(何もしないで様子を見る)

小さくて症状がない場合、定期的なMRI検査だけで数年過ごす方も多いです。

2. 手術(摘出術)

症状がある場合や、大きくなってきている場合に行います。

3. 放射線治療(ガンマナイフなど)

手術が難しい場所にある場合や、高齢で体力的に手術を避けたい場合に、ピンポイントで照射して腫瘍の成長を止めます。

 

蝶形骨縁髄膜腫とは?

脳の底(頭蓋底)には、蝶が羽を広げたような形をした蝶形骨(ちょうけいこつ)という骨があります。この骨の縁(ふち)の部分にある髄膜から発生するのが蝶形骨縁髄膜腫です。

この場所のすぐ近くには、目に関わる神経(視神経)や、脳に血液を送る大きな血管(内頸動脈)が通っています。
そのため、腫瘍が大きくなるとこれらを圧迫し、特有の症状が出ることがあります。

この腫瘍は一般的に進行が非常にゆっくりです。そのため、かなり大きくなるまで症状が出ないことも珍しくありません。主な症状は以下の通りです。

• 目の症状
片方の目が見えにくくなる(視力低下)、視野が欠ける、眼球が少し前に突き出てくる。

• 頭痛
腫瘍が大きくなり、脳圧が上がることで生じます。

• けいれん発作
脳の表面を刺激することで起こる場合があります。

• 顔の違和感
腫瘍の場所によっては、顔の感覚を司る神経に影響を与えることがあります。

 

 

髄膜腫の多くは良性ですので、他のがんのように転移して命を脅かす性質ではなく、その場でゆっくり大きくなるタイプです。

治療方針は、他の髄膜腫と同様に経過観察、手術、放射線治療とありますが、蝶形骨縁髄膜腫は視神経や動眼神経といった目にかかわる神経を圧迫して失明したり、目の動きが悪くなることが多いために手術を第一選択とすることが多いです。

 

 

 

蝶形骨縁は血管や神経が密集しているため、全てを取り切ることよりも、機能を守りながら安全に腫瘍を摘出することが優先されます。

 

手術で取り切れなかった部分や、再発を抑えるために、ピンポイントで放射線をあてる治療を行うことがあります。

 

 

【参考文献】

1. 日本脳神経外科学会(脳神経外科疾患情報ページ)

• 髄膜腫の一般的な性質や治療法について、専門医による解説が掲載されています。

2. 日本脳腫瘍学会「脳腫瘍診療ガイドライン」

• 最新の医学的エビデンス(証拠)に基づいた治療基準がまとめられています。

3. がん情報サービス(国立がん研究センター)

• 良性腫瘍であっても、脳腫瘍全般の生活上の注意点などが詳しく記されています。

 

執筆者情報

日本とドイツの医師免許を持つ脳神経外科医

市村 真也(いちむら しんや)

【保有資格・所属学会】

  • 日本脳神経外科学会専門医
  • 日本脳卒中学会専門医
  • 脊椎脊髄外科専門医
  • 日本脊髄外科学会認定医
  • 日本がん治療認定医
  • 日本神経内視鏡学会技術認定医
  • 日本医師会認定産業医
  • 日本医師会認定健康スポーツ医
  • ドイツ医師資格
  • ドイツ脳神経外科学会正会員
  • ヨーロッパ脳神経外科学会正会員

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