その鼻水、ドロドロ血液が原因かも?花粉症を悪化させないための脂質コントロール術
臨床現場で感じるアレルギーと脂質の接点
日々、多くの患者さんを診察していると、重い花粉症に悩む方の中に、健康診断で脂質異常症(高LDLコレステロールや高中性脂肪)を指摘されている方が少なくないことに気づきます。
一見、鼻の粘膜と血液の数値は無関係に思えるかもしれません。しかし、医学的な視点で見ると、これらは慢性炎症という一つのキーワードで強く結ばれています。
慢性炎症が引き起こす負の連鎖
脂質異常症は、単に血がドロドロになるだけの病気ではありません。
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血管の炎症と免疫系
血液中の余分なコレステロールが酸化(酸化LDL)すると、血管壁で炎症が起こります。この慢性的な炎症状態は、全身の免疫システムを過敏にします。 -
アレルギー反応の増幅
免疫が過敏な状態にあると、本来は無害な花粉に対しても、IgE抗体が必要以上に反応し、ヒスタミン等の化学物質を大量に放出してしまいます。
つまり、脂質異常を放置することは、花粉症の火種を常に大きくしている状態と言えるのです。
脂肪酸のバランス
私たちが摂取する油(脂肪酸)の種類は、炎症を抑えるか促すかを決定づけます。日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022」でも、EPA・DHAの摂取は推奨されており、心血管イベントの抑制だけでなく全身の炎症抑制に寄与することが示唆されています。
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オメガ6系脂肪酸(サラダ油など): 摂りすぎると炎症を促進し、アレルギー症状を強める。
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オメガ3系脂肪酸(青魚など): 炎症を抑制し、アレルギー症状を和らげる。
生活習慣でできるダブル対策
花粉症と脂質異常症、どちらの悩みも解決に導くためのポイントは食事と腸内環境です。
見えない脂を減らす
パンやスナック菓子に含まれる「トランス脂肪酸」や、加工肉の「飽和脂肪酸」は、血管の炎症を直接的に悪化させます。これらを控えるだけで、鼻の粘膜の腫れが引きやすくなるケースがあります。
青魚の脂を味方につける
サバ、イワシ、サンマなどに含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)は、血中のコレステロールや中性脂肪を下げるだけでなく、アレルギーを引き起こす物質「ロイコトリエン」の産生を抑える働きがあります。
【参考文献】 厚生労働省「e-ヘルスネット」:不飽和脂肪酸の働きにおいて、EPA・DHAの動脈硬化予防および抗炎症作用が示されています。
水溶性食物繊維の積極摂取
海藻やキノコ、納豆に含まれる水溶性食物繊維は、胆汁酸(コレステロールの原料)を吸着して排出します。また、食物繊維は、余分なコレステロールを体外へ排出するだけでなく、腸内細菌のエサとなり善玉菌を増やします。免疫細胞の約7割は腸に集中しているため、腸内環境を整えることは花粉症の症状緩和に直結します。
糖質の摂りすぎに注意
意外かもしれませんが、糖質の過剰摂取は中性脂肪を増やすだけでなく、体内の炎症レベルを引き上げます。甘いお菓子やパンの食べ過ぎは、鼻の粘膜の腫れを助長する一因になります。
医師からのアドバイス
花粉症の時期、市販薬でしのいでいる方も多いでしょう。しかし、脂質異常症の合併がある場合、以下の点に注意が必要です。
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ステロイド点鼻薬の影響
適切に使用すれば問題ありませんが、長期かつ不適切な使用は、稀に脂質代謝や血糖値に影響を及ぼす可能性があります。 -
根本治療の重要性
対症療法(花粉症薬)だけでなく、脂質異常症という「土台の病」を治療することが、結果的にアレルギー症状を軽くする近道になります。
春の不調を全身健康のチャンスに
ただの花粉症と片付けず、自分の血液の状態に目を向けてみてください。
脂質をコントロールし、体内の炎症を抑えることは、花粉症の苦しみを和らげるだけでなく、将来の心筋梗塞や脳卒中の予防にも直結します。
数値が気になる方は、ぜひ一度、血液検査を含めた専門的なコンサルテーションを受けることをお勧めします。
【参考文献】
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日本動脈硬化学会『動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2022年版』
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日本アレルギー学会『鼻アレルギー診療ガイドライン 2020年度版』
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Calder, P. C. ”Omega-3 fatty acids and inflammatory processes.” Nutrients (2010).
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厚生労働省「e-ヘルスネット」脂質異常症・食物繊維
執筆者情報
日本とドイツの医師免許を持つ脳神経外科医
市村 真也(いちむら しんや)
- 医療法人慶真会 川崎中央クリニック院長/横浜フロント脳神経外科・泌尿器科理事長
- 開成高校卒・慶應義塾大学医学部卒
- 脳神経外科専門医・医学博士
- 月9ドラマ「ヤンドク!」脳外科医療指導
- テレビ出演多数
- 小橋建太プロデュースFORTUNE DREAMのリングドクター
【保有資格・所属学会】
- 日本脳神経外科学会専門医
- 日本脳卒中学会専門医
- 脊椎脊髄外科専門医
- 日本脊髄外科学会認定医
- 日本がん治療認定医
- 日本神経内視鏡学会技術認定医
- 日本医師会認定産業医
- 日本医師会認定健康スポーツ医
- ドイツ医師資格
- ドイツ脳神経外科学会正会員
- ヨーロッパ脳神経外科学会正会員

