【現役脳神経外科医が緊急解説】イラン中東情勢の緊迫が日本の医療を脅かす?ナフサとエチレン供給から見る医薬品不足の真相
最近、ニュースで耳にするイランを中心とした中東情勢の緊迫化。
一見、私たちの健康や医療とは無関係に思えるかもしれませんが、実は病院でもらう薬や点滴、注射器などの医療器具と深い関わりがあります。
実際に当院でも手袋やエプロンなどの石油から作られる製品の在庫を確保できなかったり、納期が遅れるといった影響があります。
なぜ遠い国の出来事が、日本の医療現場に影響を与えるのでしょうか。その鍵を握るのがナフサとエチレンという物質です。
医師の視点から、患者さんの生活に関わる供給リスクについて解説します。
ナフサは医療の源:原油から生まれる万能原料
私たちが使う医薬品の多くや、医療用プラスチックの原料は、石油を精製してできるナフサ(粗製ガソリン)から作られています。
日本はナフサの多くを中東からの輸入に依存しています。現在、イラン情勢の悪化により、世界の石油の要所であるホルムズ海峡の通行が不安定になっています。
ナフサが届かなくなると、薬の有効成分を合成するための化学原料が不足し医療にも影響します。
エチレンは医療現場の名脇役
ナフサをさらに分解して作られるのがエチレンです。これは化学業界の米とも呼ばれ、医療現場では欠かせない存在です。
注射器(シリンジ)、点滴バッグ、カテーテル、さらには手術用の手袋やマスクの不織布まで使い捨て器具のほとんどがエチレンから作られるプラスチック(ポリエチレンなど)でできています。
錠剤が入っているアルミとプラスチックの包装シート(PTP包装)も、エチレン由来の素材が使われています。
医療器具を無菌状態にするために使われるエチレンオキサイド(EOG)も、滅菌ガスの原料としてエチレンから作られます。
いま、日本の医療現場で起きていること
2026年現在、中東情勢の影響でナフサの価格が高騰し、国内のエチレン生産設備も稼働調整を余儀なくされるケースが出ています。
外科手術で使われる麻酔薬(キシロカインなど)は、成分だけでなく容器の製造も中東情勢の影響を受けやすく、供給が不安定になるリスクが指摘されています。
薬の主成分を作るプロセスで必要な化学物質が滞ることで、抗生剤や鎮痛剤などのジェネリック医薬品を中心に出荷調整(制限)がかかる事態が続いています。
医師から患者さんへ伝えたいこと
私たち医療機関は、患者さんに必要な治療を止めないよう、国や製薬メーカーと協力して在庫の確保に努めています。
しかし、石油という限られた資源に頼っている以上、世界情勢が私たちの健康に直結しているのは事実です。
処方されたお薬は、医師の指示通りに正しく服用し、無駄にしないよう大切にしてください。
もし、いつものお薬が不足した場合には、同じような効果を持つ別のお薬(代替薬)をご提案することがあります。
我々は、情勢の変化を注視しながら、皆さんが安心して治療を受けられる体制を守り続けていきます。
【参考文献】
• 経済産業省:中東情勢に伴う重要物資の安定的な供給確保のためのタスクフォース資料(2026年4月)
• 厚生労働省:医薬品の安定供給に関する検討会 報告書
• 日本化学工業協会:石油化学製品のサプライチェーンと医療への貢献
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執筆者情報
日本とドイツの医師免許を持つ脳神経外科医
市村 真也(いちむら しんや)
- 医療法人慶真会 川崎中央クリニック院長/横浜フロント脳神経外科・泌尿器科理事長
- 開成高校卒・慶應義塾大学医学部卒
- 脳神経外科専門医・医学博士
- 月9ドラマ「ヤンドク!」脳外科医療指導
- テレビ出演多数
【保有資格・所属学会】
- 日本脳神経外科学会専門医
- 日本脳卒中学会専門医
- 脊椎脊髄外科専門医
- 日本脊髄外科学会認定医
- 日本がん治療認定医
- 日本神経内視鏡学会技術認定医
- 日本医師会認定産業医
- 日本医師会認定健康スポーツ医
- ドイツ医師資格
- ドイツ脳神経外科学会正会員
- ヨーロッパ脳神経外科学会正会員

