膝の症状(痛み、腫れ、引っかかり感)
膝関節について
膝関節は体重を支え、歩行や走行、跳躍などの動作を可能にする重要な役割を果たしています。
膝関節は大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)が結合してできた大関節の1つであり、周囲を半月板や靭帯、滑液包(かつえきほう)、筋肉などの構造で支えられています。膝関節の安定性と動作は、これらの構造がうまく連携して機能することにより維持されています。
膝関節の症状(痛み、違和感)は、怪我や加齢により組織の炎症やバランスの変化が起こり、出現します。
診断は身体診察に加えレントゲン、MRIを追加し組織の状態を確認して行います。
内服や外用治療、リハビリテーションによって症状が軽快することが多いですが、前十字靭帯損傷や半月板断裂など、手術が必要となる疾患もあります。
日常生活やスポーツ活動において膝を守るためには、適切なストレッチやエクササイズ、適切な装具の使用、そして安全な動作の習慣化が重要です。また、怪我や疾患の早期発見と適切な治療を受けることが重要です。
症状に対応した典型的な疾患を紹介してきます。
変形性膝関節症:歩くと膝が痛む、動き始めに膝が痛む
半月板損傷:膝を捻ってから痛む、引っかかり感がある
前/後十字靭帯損傷:着地に失敗して膝を捻った、急激な方向転換で膝を捻った その後運動不能 違和感
内側側副靭帯損傷:膝を捻ってから膝の内側が痛む
膝蓋腱炎(ジャンパー膝):ジャンプやダッシュ、ランニングを繰り返すアスリート 膝のお皿の下が痛んむ
鵞足部炎:アスリート 膝の少し内側やや下方が痛む
腸脛靭帯炎(ランナー膝):アスリート 膝の外側が曲げ伸ばしの際に痛む
オスグット病/SLJ病:小学校高学年〜中学生 膝の下の骨の出っ張り/膝のお皿の下が痛む
変形性膝関節症
膝の軟骨や半月板がすり減り、関節に炎症や痛みが生じます。初期では立ち上がり、歩きはじめなど動作開始時を中心に痛みが出ますが、症状が進行すると正座や階段の昇り降りが困難となり、安静時にも痛みが生じ平地歩行も困難になります。
症状が軽度の場合は内服・外用薬に加えヒアルロン酸と痛み止めの注射を行い痛みの管理を行いますが、痛み症状がひどい場合は手術療法を考慮します。またリハビリや生活上の注意も重要です。当院では理学療法士がマンツーマンで生活指導やストレッチ、筋力トレーニングなどのリハビリを行います。
半月板損傷
半月板は大腿骨と脛骨の間にある三日月状をした組織で、膝関節においてクッションの役割を果たして います。半月板は膝に強い外力が加わる・あるいは加齢性の変化で元々痛んでいる上に軽い怪我で切れることがあり、損傷すると膝の曲げ伸ばしの際に痛みやひっかかりを自覚します。膝が崩れるように感じることもあります。ひどい場合は膝に水がたまったり、膝を動かせなくなるロッキングを生じます。半月板には辺縁部のみ血流があるため、その周辺の断裂であれば修復手術を考慮します。
前/後十字靭帯損傷
前十字靭帯は、脛骨と大腿骨の間を横断し、膝関節を安定させる重要な組織です。前十字靭帯損傷は、バスケットボール・サッカー・スキーなどのスポーツ中の急激な方向転換や着地、また車の衝突や転倒など、膝に直接的な衝撃が加わり脛骨が前に押されることにより起こります。
症状として、急激な膝の痛み・腫れ、膝の不安定感があります。前十字靭帯損傷後、半年程度で周囲の組織である半月板の変性が始まるという報告があり、また切れた靭帯は自然再生することはないので、若年の場合やスポーツの競技レベルが高い場合は手術によって再建するしかないとされます。ただ術後スポーツ復帰までは半年程度かかるため、タイミングも重要です。
後十字靭帯損傷は脛骨が後方へ押されるようにして受傷し、同様の症状を伴いますが前十字靭帯損傷と違い、多くが保存療法の適応になります。
内側側副靭帯損傷
内側側副靭帯は膝の内側にある靭帯で、安定性を維持するために重要な役割を果たしています。この靭帯の損傷は膝より先が外側へ向かう、外反の力が強制的に加わることにより発生します。膝の靭帯損傷の中では最も多く、スポーツをする若年層に多く見られます。基本的に安静、リハビリ等の保存療法が適応になりますが、膝の不安定性が強い場合は手術療法も考慮します。
膝蓋腱炎(ジャンパー膝)
膝蓋腱(膝蓋骨の下方にある腱)は、大腿四頭筋(太ももの前側の筋肉)腱とともに膝蓋骨をつなぎ、膝の伸展を助ける重要な役割を果たしています。 膝蓋腱炎はこの膝蓋腱が炎症を起こしている状態を言い、膝の使いすぎや急激な運動などにより生じます。膝前部の痛みや腫れ、運動時の痛みや違和感などの症状があり、特に階段の上り下りや膝の曲げ伸ばしの動作で症状が増悪しやすいです。使いすぎによる症状なので基本的には安静。リハビリによる治療がメインになりますが、症状が強い場合は膝蓋腱の周囲に痛み止めの注射・ハイドロリリースを行います。
鵞足部炎
膝の内側の部分には縫工筋、薄筋、半腱様筋が付着しており、この付着部に炎症が起きることを鵞足部炎と言います。ランニング、サッカー、水泳といったキックを繰り返すスポーツで発症することが多く、階段の昇り降りで症状が増悪します。鎮痛薬での疼痛コントロール・リハビリがメインの治療になりますが、症状が重度の場合、エコー下に痛み止めの注射を追加することもあります。スポーツ前後のストレッチやフォーム矯正も大事になるので、リハビリで指導を行なっていきます。
腸脛靭帯炎(ランナー膝)
腸脛靭帯は太ももの外側にあり、膝の外側にあるGerdy結節まで続く筋膜様組織です。ランニングなどの繰り返しの膝運動により腸脛靭帯が大腿骨の外側の突起と摩擦を起こして炎症がおこり、痛みを生じる状態を腸脛靭帯炎といいます。ランナーの方に多く生じるため、ランナー膝とも呼ばれます。症状は膝の外側の痛みになりますが、深い曲げ伸ばしの際より軽いジョギングの際に痛みが誘発されることが多いです。症状の急性期には大腿骨外側顆と腸脛靱帯の間にある滑液包へエコーガイド下注射を行うこともありますが、膝の安静・消炎鎮痛・リハビリがメインの治療になります。
オスグッド病/SLJ病
オスグッド病は、未成熟で力学的に弱い脛骨粗面(膝のお皿の下)の前方部分が、繰り返す膝蓋靭帯の牽引力により部分的な剥離を起こし発症するスポーツ障害です。膝の下方に痛みと腫れの症状が出ます。10~14歳の男児、8~12歳の女児に発症しやすいのが特徴です。まずは1ヶ月運動を中止し安静をとり、大腿四頭筋ストレッチを痛みのない範囲で行うよう指導しますが、成長が止まっても疼痛が続く場合は手術を行う症例もあります。
SLJ病(Sinding-Larsen-Johanson病)は、同様の症状が膝蓋骨の下の部分に出るものを言います。