子宮頸がんワクチン
なぜ脳神経外科医が子宮頸がんワクチン!?
厚生労働省の勧告により子宮頸がんワクチン(ヒトパピローマウィルス感染症予防接種)が今年度より再開となりました。これに合わせて当院では公費(川崎市在住者のみ)による定期予防接種としてのガーダシルと自費のシルガード9により子宮頸がんワクチンを始めました。
なぜ脳神経外科のクリニックが子宮頸がんワクチンを行うのかと疑問に持つかと思いますが、それは私は25年以上前の医学部生時代に自主学習として子宮頸がんとヒトパピローマウィルスをテーマとして研究していたからです。
医学部4年生時のレポート
当時から子宮頸がんがヒトパピローマウィルスと強い関連があると言われていましたが、日本ではワクチンの普及が遅れたために、子宮頸がんが先進国で唯一罹患率が増加しているという実態があります。 子宮頸がんは私の専門外ではありますが、こうした現状を日本の医師として見過ごすわけにはいかないと考え、子宮頸がんワクチンの導入を決断しました。
今回の子宮頸がんワクチン導入にあたり、川崎市医師会の主催するワクチンの講習会とシルガード9のe-ラーニングを受講しました。
ガーダシルとシルガード9の違い
当院で取り扱う子宮頸がんはガーダシルとシルガード9です。両ワクチンとも6か月で3回の接種が必要です。
ガーダシルとシルガード9の大きな違いはカバーするヒトパピローマウィルスの型がガーダシルは4つの型なのに対して、シルガード9は9つの型であることです。
シルガード9は子宮頸がんの高リスク型である30番台やアジア人に多い50番台を網羅しています。
ガーダシルは1回19800円(税込み)で公費助成の場合は無料です。シルガード9は公費助成はなく1回29700円(税込み)です。
ワクチン接種の対象
ガーダシル、シルガード9共に接種の対象は9歳以上が対象です。
性活動を開始するとヒトパピローマウィルスに感染する可能性が誰にでもありますので、初めての性交渉を持つ前にワクチンを接種することが理想的です。 性交渉の経験がある方は、すでにいずれかの種類のヒトパピローマウィルスに感染している可能性がありますので、ワクチン接種で得られる効果が下がってしまう可能性があります。
小学校6年生(12歳となる日に属する年度の4月1日)から高校1年生相当(16歳となる日の属する年度の3月31日)までの女子の方
標準的な接種年齢:中学1年生に相当する年齢(13歳となる日の属する年度の当日から年度の末日までの期間)
となっています。対象者には川崎市からワクチン接種のご案内と予診票が順次送付されます。当院ではガーダシルを投与します。
シルガード9は高価なこともあり現時点では公費助成の対象ではなく自費での接種のみです。シルガード9が早く公費で接種できるようになるのを切に願います。
キャッチアップ接種
積極的勧奨が差し控えられていたことにより接種の機会を逃した方への救済措置として、公費(無料)による接種機会を提供することとなりました。
平成9年度生まれ~平成17年度生まれ(誕生日が1997年4月2日~2006年4月1日)の女性の中に、通常のヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの定期接種の対象年齢(小学校6年から高校1年相当)の間に接種を逃した方がいらっしゃいます。厚生労働省の通告によりまだ接種を受けていない方に、あらためて、HPVワクチンの接種の機会をご提供しています。
接種の対象となるのは
・平成9年度生まれ~平成17年度生まれ(誕生日が1997年4月2日~2006年4月1日)の女性
・過去にHPVワクチンの接種を合計3回受けていない(※2)
です。
接種が受けられる期間は令和4(2022)年4月~令和7(2025)年3月の3年間、ワクチンを公費で接種できます。当院ではガーダシルを接種します。
また、川崎市では救済措置の実施期間中に定期接種の対象から外れる世代(平成18年度生まれの方と平成19年度生まれの方)についても順次救済措置の対象となります。
平成18・19年度生まれの方
・平成18年度生まれの方…平成18(2006)年4月2日から平成19(2007)年4月1日生まれの方
・平成19年度生まれの方…平成19(2007)年4月2日から平成20(2008)年4月1日生まれの方
接種の際の注意点
ワクチンは途中で変えることなく必ず同一のものを接種して下さい。また、接種の記録を残すために母子手帳を必ず持参してください。公費でガーダシルを接種される方は川崎市から送付された接種券を持参してください。シルガード9を接種の際にはオンラインによる登録が全員に必要なためにスマートフォンを持参してください。ガーダシルでは必要ありません。
ガーダシル、シルガード9は共に3回の接種が必要です。接種後はクリニックで30分安静とし経過観察する必要があります。
男性にも投与できます
世界的には子宮頸がんワクチンは男性への接種も当たり前となっている国が多いのが現状です。2020年12月に日本でもようやく厚生労働省がガーダシルの適応に男性を追加する方針を発表しました。男性への接種を推奨する理由は
①ヒトパピローマウイルス感染は性感染症である
②子宮頸がんワクチンは尖圭コンジローマも予防する
の2つが挙げられます。
接種年齢については、女性と同様、性交渉を行う前の段階で接種することが望ましく9歳から接種できますが12-13歳頃が最も適した年齢といわれています。男性では尖圭コンジローマを発症していなければ、26歳くらいまでの接種が推奨されます。27-45歳の方は、効果は部分的であるため、接種は総合的に判断して決める必要があります。
なお、日本ではシルガード9を男性に接種することはできません。