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ヤンドク!の手術を脳外科医療指導医が解説
⑨前交通動脈脳動脈瘤に対するコイル塞栓術(第8話)

[2026.03.03]

前交通動脈脳動脈瘤とは?

前交通動脈脳動脈瘤は脳の血管にできるコブ(脳動脈瘤)の中でも、もっとも発生頻度が高く、かつ注意が必要な場所の一つです。

前交通動脈は、左右の前大脳動脈をつないでいる重要な血管で、
脳の中央・前方(おでこの奥あたり)にあります。

脳血管の前方には左右の血管をつないで輪っかのような構造を作っているウィリス動脈輪というネットワークがあります。 その中で、左右の前大脳動脈をつないでいる短い血管を前交通動脈と呼びます。

この合流地点は血流の負荷(ストレス)がかかりやすいため、血管の壁が膨らんでコブ(脳動脈瘤)ができやすいのです。

脳動脈瘤とは血管の壁が弱くなって風船のようにふくらんだ状態のことです。
多くは無症状ですが、破れるて 破裂するくも膜下出血を起こします

突然の激しい頭痛(バットで殴られたような痛み)、意識障害、吐き気・嘔吐、けいれん

などを起こし、命に関わる重い病気になります。

前交通動脈脳動脈瘤の特徴

前交通動脈脳動脈瘤には、他の場所とは異なるいくつかの特徴があります。

  • 破裂しやすい: 他の部位の動脈瘤に比べて、小さいうち(5mm未満など)でも破裂してくも膜下出血を起こすリスクが比較的高いと言われています。

  • 症状が出にくい: 破裂する前(未破裂)の状態では、神経を圧迫して症状を出すことが稀です。そのため、脳ドックなどで偶然見つかるケースがほとんどです。

  • 高次脳機能: この血管のすぐ近くには、記憶や意欲を司る大切な領域があります。もし破裂して出血したり、手術でこの周辺を損傷したりすると、性格の変化や物忘れなどの症状(高次脳機能障害)が出ることがあります。

治療の選択肢

前交通動脈脳動脈瘤が見つかった場合、そのサイズや形、年齢などを考慮して経過観察か治療かを決定します。治療が必要な場合は、2つの方法があります。

脳動脈瘤クリッピング術(開頭手術)

頭蓋骨を一部開けて、顕微鏡で見ながら動脈瘤の根元を金属製のクリップで挟んで血流を止める方法です。 再発率が非常に低く、確実性が高いです。

コイル塞栓術(カテーテル治療)

足の付け根から細い管(カテーテル)を通し、動脈瘤の中にプラチナ製のコイルを詰め込んで固める方法です。 頭を切らないため体への負担が少なく、回復が早いです。

今回はコイル塞栓術を選択しました。

 

前交通動脈脳動脈瘤に対するコイル塞栓術

前交通動脈脳動脈瘤に対するコイル塞栓術は、開頭せずに足の付け根からカテーテルを通して治療する脳血管内治療です。

前交通動脈は脳の深部に位置し、周囲に大切な神経や血管が密集しているため、この切らない治療(低侵襲治療)が選択されるケースが増えています。

今回は大友先生がカテーテル治療を担当

 

コイル塞栓術の仕組み

この治療の目的は、動脈瘤の中にプラチナ製の柔らかいコイルを詰め込み、コブの中に血液が入らないようにすることです。血流が遮断されることで、コブの中で血液が固まり、破裂のリスクを消失させます。

太ももの付け根(股関節)などの動脈からカテーテルを挿入し、細い管を脳の血管まで進めます。

さらに細いカテーテル(マイクロカテーテル)を、前交通動脈瘤の「中」に慎重に挿入します。

 数本〜数十本のコイルを、コブの形に合わせて隙間なく詰め込みます。

 適切な位置に収まったら、電気的または機械的にコイルを切り離し、カテーテルを抜いて終了です。

ステント併用コイル塞栓術を施行

 

前交通動脈瘤ならではの治療のポイント

前交通動脈は左右の血管をつなぐ交差点のような構造をしているため、特有の難しさと工夫があります。

・ステント併用(ステントアシスト)

前交通動脈脳動脈瘤はコブの出口(ネック)が広いことが多く、コイルが太い血管にはみ出してしまう危険があります。その場合、網状の筒(ステント)を足場にしてコイルを閉じ込める手法がとられます。

・バルーン併用(バルーン・リモデリング)

 一時的に小さな風船(バルーン)を膨らませて出口を塞ぎながらコイルを詰めることで、きれいな形に整えます。

今回はステントを併用しました。

執筆者情報

日本とドイツの医師免許を持つ脳神経外科医

市村 真也(いちむら しんや)

  • 医療法人慶真会 川崎中央クリニック院長/横浜フロント脳神経外科・泌尿器科理事長
  • 開成高校卒・慶應義塾大学医学部卒
  • 脳神経外科専門医・医学博士
  • 月9ドラマ「ヤンドク!」脳外科医療指導
  • テレビ出演多数

【保有資格・所属学会】

  • 日本脳神経外科学会専門医
  • 日本脳卒中学会専門医
  • 脊椎脊髄外科専門医
  • 日本脊髄外科学会認定医
  • 日本がん治療認定医
  • 日本神経内視鏡学会技術認定医
  • 日本医師会認定産業医
  • 日本医師会認定健康スポーツ医
  • ドイツ医師資格
  • ドイツ脳神経外科学会正会員
  • ヨーロッパ脳神経外科学会正会員

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