ヤンドク!の手術を脳外科医療指導医が解説
⑥脊髄動静脈奇形摘出術(第5話)
今回の手術は脳神経外科(湖音波先生)と整形外科(沙羅先生)の合同手術でしたが、脊椎脊髄外科専門医として両科の手術指導をいたしました。
脊髄動静脈奇形とは
脊髄動静脈奇形は、脊髄内の血管が先天的に正しく形成されず、本来毛細血管を介してつながるべき動脈と静脈、直接つながってしまう血管の奇形です。
高圧の動脈血が直接静脈へ流れ込むため、静脈が拡張し、脊髄の血流が滞ったり(うっ血)、脊髄が圧迫されたりします。
血流障害や血管の圧迫、出血により、症状はゆっくり進行することが多く、発症部位によって異なります。手足のしびれ、運動麻痺、歩行困難、嚥下障害、排尿・排便障害が徐々に起こります。
まれに血管が破れて出血(脊髄出血)すると、突然の激しい痛みとともに急激に症状が悪化します。
MRIでは 特徴的な血管の影(flow void)で診断されます。
脊髄動静脈奇形はまれな病気で、100万人に1人程度の発症率と言われる希少疾患(指定難病)です。脊髄腫瘍全体の約4%程度と言われています。
治療は手術で 顕微鏡下で異常な血管を直接摘出または切断するか、血管内治療でカテーテルを用いて異常な血管を詰め、血流を遮断します。
今回は手術を選択しました。
脊髄動静脈奇形のイメージ図
脊髄動静脈奇形摘出術
手術は全身麻酔で背臥位で行います。動静脈奇形は延髄から第3頚椎(C3)まであるために、第1-3頚椎の椎弓切除を行いました。椎弓とは脊髄(神経)の後方を覆っていて脊髄を保護する骨です。
皮膚は正中に切開して、椎弓に付着する筋肉を剥離して椎弓を露出させます。
椎弓は左右に脊髄全体が確認できる範囲でドリルで左右に溝を作り、第1-3頚椎まで外します。脳動脈奇形を摘出した後に椎弓を戻すために、できる限り椎弓は削らないように温存します。
第1-3頚椎の椎弓切除術
動静脈奇形は延髄まで達していたために、頭蓋骨(後頭骨)も一部ドリルで削りました。
脊髄を覆っている硬膜を切開した後に脊髄から動静脈奇形を脊髄から顕微鏡を見ながらハサミやバイポーラなどを使用して剥がして摘出します。
頚髄C1-3の損傷を起こすと自発呼吸が困難になり、人工呼吸器が必要となることがあります。
また、首から下の全運動機能・感覚が失われる四肢麻痺(完全麻痺)となる可能性が高いです。
こうした理由から、動静脈奇形を脊髄から摘出する作業は慎重に行わなくてはなりません。
動静脈奇形を摘出したら、脊髄を覆う硬膜を縫合し、切除した椎弓をスクリューで固定します。
特に第1-3頚椎は頭部を支え、首の自由な運動を実現する上で極めて重要な役割を持っているためにできる限りもとの通りに椎弓を戻します。
ドラマとはいえ、こんなに華やかで美しい手術室を初めて経験しました。
湖音波先生と沙羅先生のおふたりが術者で、男性医師達が助手を務めているのも時代の流れを感じました。

