【現役脳神経外科医が緊急解説】イラン中東情勢の緊迫化が招く医療用手袋不足の危機
現在、医療現場では静かながらも深刻な危機が進行しています。それは、手術や処置において欠かすことのできないニトリル製医療用手袋の供給不足です。
現状では直ちに患者様へご迷惑をおかけする状況ではありません。
当院では通常通りの医療用手袋の仕入れを行っており、買い占めなどの不必要な仕入れは一切致しておりません。
ただし、当院は入院施設を有する有床診療所であり、重症患者様への感染対策として医療用手袋の使用量が一般的なクリニックよりも多いという実情があります。
5月13日放送のフジテレビ めざましテレビでもコメントした通り、現在当院ではSサイズとLサイズの入荷が困難となっており、Mサイズのみで対応せざるを得ない場面も増えています。
5月13日放送のフジテレビ めざましテレビにて医療用手袋不足について解説しました
医療専門の卸問屋から納入されない場合は、品質の不安定さや価格高騰のリスクを考慮しつつも、インターネット通販などを通じて緊急的に物資を確保することもあります。
政府は医療用手袋5000万枚放出を表明しておりますが、また医療現場には医療用手袋も詳しい情報も入ってきておりません。(2026年5月13日)
現在は診療に支障はありませんが、この状況が長期化すれば医療用消耗品の不足が治療の障壁になる可能性も否定できません。
なぜ、遠く離れた中東情勢が日本の医療現場にこれほどの影響を及ぼすのか、その構造と診療への影響について詳しく解説いたします。
なぜイラン中東情勢が医療用手袋の不足に直結するのか
結論から申し上げますと、医療用手袋の主原料は石油だからです。イランを含む中東地域で緊張が高まると、石油の精製プロセスから生まれる化学物質の供給網が寸断されるリスクが生じます。その工程は以下の通りです。
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ナフサの供給不安
石油を蒸留して得られるナフサは、ゴムやプラスチックの原料の原料です。中東は世界有数の供給源ですが、情勢不安による原油価格の高騰や地政学的リスクが安定供給を脅かしています。 -
エチレンからニトリルへ
ナフサを分解して作られるエチレンやプロピレンをさらに加工することで、医療用手袋の主要素材であるニトリルゴム(NBR)が製造されます。 -
製造コストの急騰
原料不足に加え、世界的なエネルギー価格の上昇が製造コストを押し上げ、世界規模での在庫争奪戦が引き起こされています。
医療現場および手術への具体的な影響と懸念点
特に、ミリ単位の精度が求められる脳神経外科の手術において、指先の繊細な感覚を損なわない薄さと、感染症から身を守る強靭さを備えたニトリル手袋は不可欠な存在です。
| 手術の質の維持 | 手袋の品質低下やサイズが合わない代用品の使用は、手術のパフォーマンスに直結する恐れがあります。 |
|---|---|
| 感染対策への懸念 | 手袋は使い捨てが鉄則です。不足が深刻化すれば、不適切な節約を強いられるといった衛生上のリスクを孕んでいます。 |
当院の取り組みと患者様へのお願い
現時点では、直ちに診察や手術が休止することはありませんが、全国の病院で資源を守るための対策が始まっています。当院では以下の対応を行っております。
| 在庫の厳格な管理 | 必要な時に、必要な分だけを使用する徹底した無駄の排除を実施しています。 |
|---|---|
| 代替品の検討 | 処置の内容に応じて、プラスチック手袋や天然ゴム手袋への切り替えを検討しています。 |
| 供給ルートの多角化 | 特定の地域に依存しないよう、複数の調達ルートの確保に尽力しています。 |
診察時にいつもと手袋が違うと感じられることがあるかもしれませんが、これは限られた資源を適切に管理し、救急患者様や手術を控えた方々へ確実に医療を届けるための工夫です。
国際情勢と医療資源の密接な関係
今回の事態は、日本の医療がいかに国際情勢やエネルギー供給に依存しているかを浮き彫りにしました。医療用手袋一つをとっても、地球の裏側の情勢と密接に繋がっています。
私たちは引き続き、患者様に適切な医療を提供できるよう、物資の確保に全力を尽くしてまいります。皆様におかれましても、医療資源の適正な利用へのご理解とご協力をお願い申し上げます。
参考文献および出典
経済産業省:石油化学工業の現状と課題(ナフサ・エチレン動向)
厚生労働省:医療用物資の備蓄・確保に関する指針
日本産婦人科医会/日本外科連盟:医療用消耗品の供給不足に関する緊急調査報告
国際エネルギー機関(IEA):石油市場報告書(中東情勢とサプライチェーンへの影響)
厚生労働省:公募公示(医療用非滅菌手袋売払事業(合計5000万枚))
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執筆者情報
日本とドイツの医師免許を持つ脳神経外科医
市村 真也(いちむら しんや)
医療法人慶真会 川崎中央クリニック院長/横浜フロント脳神経外科・泌尿器科理事長
開成高校卒・慶應義塾大学医学部卒
脳神経外科専門医・医学博士
プロレスラー小橋建太プロデュースFORTUNE DREAMのリングドクター
【保有資格・所属学会】
- 日本脳神経外科学会専門医
- 日本脳卒中学会専門医
- 脊椎脊髄外科専門医
- 日本脊髄外科学会認定医
- 日本がん治療認定医
- 日本神経内視鏡学会技術認定医
- 日本医師会認定産業医
- 日本医師会認定健康スポーツ医
- ドイツ医師資格
- ドイツ脳神経外科学会正会員
- ヨーロッパ脳神経外科学会正会員

